東京都調布の街を見下ろす丘の上に、住宅作品「空のバルコニー」が完成しました。
「国分寺崖線」。東京都国分寺市から世田谷、大田区付近まで、東京都南部を横断するように高低差約10mほどの崖が東西方向に長く続く、東京の特徴的な地形のひとつです。
この家の敷地は、その国分寺崖線の一部。
南側に多摩川沿いの平野を見おろすことができる、とても見晴らしのいい丘の上です。
国立天文台にほど近いことあり、「青空」と「星空」がテーマになりました。
広い空と、まわりは緑に囲まれ、四季の変化とともに気持ちのいい風景に包まれます。
そして夜は星空を存分に楽しむことができる。そんな素晴らしいロケーションです。
そこで「空」と「風景」を楽しみながら暮らす、大きなテラスのある家を設計しました。
高窓のある広いリビングルームと、それと一体となる広いテラスがとても魅力的に出来上がりました。
南側に大きく迫り出した木製のバルコニーは、やわらかい居心地をつくります。
建物本体は、ガルバリウム鋼板の角波板。「黒」で全体を引き締めます。
見晴らしのいい場所である反面、崖上であるがゆえの地盤強度への不安がありましたが、詳細な地盤調査を実施した上で、適切な地盤補強工事を行なっています。
北面、東面の窓は通風と光取りに必要最小限の大きさで適所にセット。プライバシー確保や、セキュリティーにも配慮してします。この窓のレイアウトのイメージは「星座」です。
土間のある玄関
鉄の1枚板でできた庇の下を通って、入口ドアへ。
ドアは、杉板で特注製作しました。クールな黒の外壁に対比させ、ここは少しやわらかい印象を与えます。
このアプローチに沿って、ワンポイントで白い左官仕上の壁を採用。手作り感をのある仕上がりです。
ドア横の照明は、施主さんセレクトの船舶用器具です。
ドアを開けると、広めの土間。
玄関は、いろんな使い道のできる多様な空間としてデザインしました。その土間を囲んで、和室や寝室(個室)、2階への階段などが配置されます。
階段と並んで見える木製のパネル部は、玄関収納(シューズ、傘、コート)。左にスライドさせて開きます。
和室は、土間と視覚的に一体につながります。
和室も土間もそれぞれ5帖程度ですが、一体化の効果により、楽しさや使い方がぐっと広がります。
リビング〜キッチン〜ロフト、という一体空間
もう一度、2階(リビング)を見てみましょう。
リビングとキッチン、その上のロフト。
3つの場所は、立体的かつ開放的につながっています。
リビングルームの中心は、オープンな対面キッチン。
キッチンは、空間の中心であり、動線の中心でもあります。
キッチンの目の前には、ダークグレーの壁を背景として、黒い鉄材と着色されたタモ材で作られた階段。明暗の重心差をつくって空間に距離感を与えました。
階段横のダークグレーの壁は、独特の質感と豊富な色が特徴のポーターズペイントからセレクト。
後ろ(中)には、洗面スペースと浴室が見えます。
暮らしの動線、家事動線をここに集約しているのです。
ロフトは、リビング全体を見おろす場所。
そして高窓をとおして、はるか遠くの景色まで見通すことができます。
好みの素材をつかう
個室や水まわりには、施主さん家族がこだわって選んだ素材。現場ではずいぶん一緒に悩みました。
洗面室の壁には、さわやかな色合いのモザイクタイル。
子ども部屋には、ネットで見つけた素敵な輸入壁紙。
寝室は、ワンポイントでダークグレーの壁紙。…などなど。
開放的で気持ちのいいリビングルームとテラス。
こだわりの素材でまとめた小空間。
バランスの取れた、とても素敵な住宅です。