三鷹の「リトルスターレストラン」が、今日、開店10周年を迎えました。
ちょうど10年前、内装設計をさせていただいたお店です。
僕の設計思想の原点のひとつと言える、大切な仕事です。
たしか2006年、お店の2周年のとき書かせていただいた文章を再録させていただきます。
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2004年春、少し独特なコンセプトをもったレストランの内装を手掛けました。
編集やデザイン活動をしていた4人のメンバー達が始めたリトル・スター・レストランです。
そのコンセプトは、お客さんだけでなく、自分たちスタッフも心地よく過ごせる空間にしたい‥ 一言でいえばそんな感じでした。
「自分たちが心地いいこと」..
案外当たり前のことだけど、僕には何だかとても新鮮に感じられました。
例えば、来ていただきたいお客さんのキャラクターを想定しながら空間をデザインする、という普通の方法。その手の「集客するためのデザイン」は、リトル・スター・レストランには必要無い。 先ず自分たちにとって心地いい空間をつくり、それに共感してくれる人たちが集まってくれる。‥そういうお店を目指している、と。
きっと他所に無い、いいお店になりますね。そう話しながら作業を進めました。
まず、焦げ茶色の木の壁や床を「場」の背景にします。そして客席と一体になるような位置で厨房をレイアウト。
カウンターの高さや素材も、スタッフとお客さんが、落ち着きながらも適度な距離感でコミュニケートできるように。
そして、厨房設備というレストランの基本機能と、素朴な照明システムをきちんとセットして、 「大きなリビングルーム」 のような空間をつくったところで設計者の役割は終わりです。
その後は、メンバーたちのチカラでまさに「自分の部屋」を作るように店内を仕上げていきました。
自分たちで塗った白い壁と、街で見つけてきた古い家具、 好きな本、友人アーティストによる作品たち..すべてがインテリアの主役です。
そして今、お店には美味しいごはんと素敵な時間がいつもあって、多くの人たちにとても愛されるレストランになりました。
そこには、お客さんとスタッフが共有するリビングルームのような「心地よさ」が満ちています。
(以上、2006年記事再録)
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今、個人経営の店舗が存続していくのは、 並大抵の大変さではありません。
じっさい、僕らのまちでは、いとも簡単に小さなお店が次々と消えてなくなっていきます。
残念なことだと思う。
すべて大手資本のお店だらけになってしまったら、どんなにつまらないことだろう。
「小さな場所」。
それは、実は誰もが必要としている、大切な場所だと思う。
「小さな」というのは、規模のことだけじゃない。
価値観や生き方、人と人との関係性、あるいは出来事。
そういうさまざまな「小さなもの」が、僕は大切だと思う。
でも、「経済至上社会」という奇怪で大きな化け物のような世界の中で、「小さな場所」をつくり、そして運営していくことは、とっても困難なことです。
リトルスターレストランが、この困難に挫けず、かけがえのない「小さな場所」を10年間運営し続けてきたことは、本当に「尊敬」すべきことだと思います。
おめでとうございます。
そして、また次の10年、できるかどうか分からないけれど、頑張ってください。
いや、頑張りましょう。
俺も、頑張る。
リトルスターレストラン(三鷹)
http://www.little-star.ws