プロジェクト「そらのバルコニー」


久しぶりにブログ更新を再開します。
昨年完成したいくつかの建物は追々と発表(編集中)していくとして、やっぱり進行中のプロジェクトから。では進捗順でいきましょう。まずは先月着工、こんどの夏に完成予定の「そらのバルコニー」です。


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冒頭画像が、完成予定パース。
黒いガルバリウム鋼板と、焦げ茶に染められた木の板で構成され、南側に大きくはり出したバルコニーが特徴です。
施主は30代の若いご家族。昨年(2013年)の夏の終わりごろに設計着手しました。
場所は、東京都多摩エリア。駅から少し距離があるものの、周囲は豊かな緑にかこまれ、寺社や公園がすぐ近くにあるという人気の場所。そして南に中央フリーウェイ♪を見下ろす高台、という絶好のロケーションです。
下の写真が現地です。南側は落差のある崖になっていて、眺望を遮るものは何もなし。
最初のロケハンで、すでに僕の想像力がフル回転になったのは言うまでもありません。
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最初のプレゼンテーションで2つの案をつくりました。
題して、
「丘の上の黒い水晶」と、

「空のバルコニー」。

一見、外観は対照的な2案ですが、見た目以上にじつは使い勝手がそれぞれ違います。
すなわち、「1階リビング」か?、「2階リビング」か?。
「丘の上の黒い水晶」では、リビングは1階にあり、まわり(庭)に縁側のようなデッキをまわします。2階に個室が配置され、多角形の屋根の一部がカットされて夜空の天体観測をするためのスペースが設えてあります。
対して、「空のバルコニー」。こちらは2階リビングとして高い天井を確保して、崖側に大きな空中デッキをつくっています。1階には個室と水回りが配置されます。この場所の良さを素直にとらえて、シンプルなコンセプトでまとめた案です。
もちろん僕はどっちもお気に入り。
通常どのプロジェクトでも、1stプレゼンテーションでは、だいたい2〜3個くらいのアイディアを提案させて頂いています。それを施主さんに見てもらって「こっちだ!」と決断していただくわけですが、この決定の瞬間がワクワクします。
その日のうちに「こっち!」と決断していただいたり、「う〜ん..」と1週間ほど悩んでいただいたり…
どっちを選ぶか?だけではなく、その決断の様子を見ているだけでも、施主さんの「性格」というか、「ものの考え方」が手に取るようにわかります。
これから長い時間をかけて設計作業を始めるにあたって、複数の案から選んで頂く…というプロセスこそ、施主と設計者のコミュニケーションを構築する上で、見逃しちゃいけない重要な瞬間なのです。
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かくして、このプロジェクトでは見事「空のバルコニー」が採用されました。
いつもは、この選ばれた案をネタにして、大胆なアレンジを繰り返してデザインが完成されます。最初に選ばれたデザインが原型をとどめないで大変身をとげることもしばしばです。
しかし、この「空(そら)のバルコニー」は、最初のアイディアがほぼそのままで残っています。はじめに発見された「場所の個性」と「デザインのコンセプト」、それと「施主の思い」が見事に一致したまま着地しました。いつものエスの進め方からいうと、かなり珍しいケースかな。
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現場は、ちょうど始まったばかりです。
来週には、建て方が開始され、週末に上棟の予定。
この「そらのバルコニー」に立って、風に吹かれてみたい!
施主さんだけでなく、設計者としても楽しみでしょうがありません。
乞うご期待!!