今年から新しい名刺。活版印刷です。
ロゴマークも省略して、思い切りシンプルに。
オーガニックな紙の上に「文字」だけのデザインとしました。
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作ってくださったのは、銀座の老舗印刷所「中村活字」さん。
金属でできた「活字」を、昔ながらの職人さんが文字(活字)をひとつずつ丁寧に組合わせて版をつくっています。
今では、ほとんど使われなくなった印刷技術です。もうあまり見ることができません。(僕はふと、昔、小学生の社会科見学で訪問した新聞社の印刷室を思い出しました。)
とても貴重な技術を絶やさないように、今まで続けられてきた「中村活字」さんには、頭が下がります。
(今でこそ、インターネットを通して新しい顧客が得られるでしょうが、以前は存続困難な時期もあったでしょう)
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さて、
活版印刷には、「できること」と「できないこと」があります。
むしろ、現在のDTP技術と比べたら、できないことだらけ。
活字は文字サイズごとボディーが決まっているから、規格を逸した文字詰めができないし、フォントの選択肢もあまりない。もちろんハーフトーンも不可能。
今、パソコンでのデザインに慣れきった感覚から言えば、とても「不自由」が多い。
でも、それは「不自由」とは言うべきじゃないでしょう。
活字をプレスした文字の窪みと陰影。
そのまわりの紙の質感と絶妙なインク量の奥深さ。
その文字の凹凸が指先に伝わる感触。
この活版印刷の名刺を手に取ったとき、いろんなことを感じることができます。
深い豊かさを感じられるのは、まさに「職人の手仕事」だから。熟練した職人だからこそ裁量できる「自由」があってこそ。
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大量生産と大量消費の時代が終わって、「手づくりの大切さ」が再び理解されつつあります。
僕の現場においても、できるだけ「手づくり」を重視してきました。
でもただ「手づくり」であれば、それで良いのではない。
職人のモノにかける「意思」と、
職人だけが持ちえる「自由」が、出来上がったモノに実現されなくちゃいけない。
設計者としては、それをうまくデザインできるかどうか..。
..それを再認識した次第です。