吉増剛造・ REQUIEM—深い水の惑星の亀の島(ハヤ、龍宮ヘノ、……)巡礼の旅、……


プンクトゥムの寺本さんから、プンクトゥム・タイムズNo. 15「吉増剛造 REQUIEM – 深い水の惑星の亀の島(ハヤ、龍宮ヘノ、……)巡礼の旅、……」を送っていただきました。


 
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PUNCTUM TIMES(プンクトゥム・タイムズ)は、
タブロイド判新聞という形式をつかって、今まで沢山の作家を取り上げてきた非常に質の高いメディアです。
今回の特集は、詩人「吉増剛造」による「詩」と「写真」。
3.11大震災を経験してしまった人間たちが、これから一体何ができるのだろうか?
それを深く考えさせられる濃密な特集です。
詩人、吉増剛造の作品は、
文法が拡張され、句読点と言語が重層し、文字が「音」となり、音が「文字」となり、時系列の進行が錯綜する難解な散文詩であり、静かにかつ激しく、読み手の心をとてつもなく深いところへと否応なしに引きずりこんでいく…という他にない圧倒的なオリジナリティのある独自なものです。
今回の特集では、
3.11後の日本から、LA、アリゾナへの旅へ。
そこで記録された言葉たちは、新聞「PUNCTUM TIMES」に定着されました。
バサバサッと、新聞紙をめくります。
ページ半ば、こんなフレーズがありました。

「ひとりひとりが名もあり、大切な生涯もあり、深い深い内在する井戸を、あわせいきている、姿なき、枕木なのだ、・・・」

「・・・。円空のようなイメージに戻さずに、震災の死者となられた方々に、そのそれぞれの内在の井戸の水(みず)のひかりに深い哀悼を送る、・・・。」

「最早、わたくしたちは、全能不滅ノ自然(神)への畏敬をこうして喪い、・・・いいか、憎悪のときをむかえたのかも知れなかった、・・・。」

「前日の”海”への憎しみに近い心の導き方を、いやそうではないのだ、未聞ノ夜ヲ、ワタクシタチハ、ヒライテ、入ッテイカナケレバナラナイ、・・・」(文字強調:ブログ筆者による)

吉増剛造さんによる、強く、明確な言葉をつかったメッセージです。
この特集には、吉増さん自身による生原稿も掲載されています。
鬼気迫る、激しい、しかし美しい「詩」。
僕は、「恐怖」にも似た、興奮を感じずにはいられませんでした。
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ふと、僕は思い立って、吉増剛造さんの初期の詩集「熱風(a thousand steps)」(1979年)を本棚から取り出してみました。
これは、僕が高校生の時に手に入れたもの。
数年前に訳あって、ほぼすべてを古本屋さんに売ってしまった僕の旧蔵書の中で、ほんの数冊だけ残してある大切なものの1つです。
そこには、

  郊外の
  、駅で
降り

  未来の
   、ほう
   へ
     、耳
 を
  澄まし、
 、


  投げあげて、パピルス、葦も、耳を、ナイル河畔も、耳を、—-
澄ませ、

..と、あります。
美しい詩です。
(独特な文字レイアウトも横書きながら再現してみました..)
30年ほど昔の書物をあらためて読みかえしてみると、吉増剛造さんはずっと「未来」のことを書いてきたんだ..ということを今さらながら知ることができます。
吉増さんが、彼の眼前にある重層するイメージと、そこに聞こえる「音」、そして言語と精神の揺らぎのなかに、ずっと見ていたのは、やはり「未来」だったのです。
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3.11大震災は、今までは顕在化していなかった、いろいろな負の状況を、まさに進行形で明らかにし続けています。
この状態が続くならば、日本はどんどんネガティブな方向へ行ってしまうでしょう。
それじゃ、いけない。
じゃあ、何ができるのか?
もちろん立場によって違うでしょうが、
それを深く考えさせられる、今回のプンクトゥム・タイムズNo. 15「吉増剛造 REQUIEM – 深い水の惑星の亀の島(ハヤ、龍宮ヘノ、……)巡礼の旅、……」です。
ぜひ、多くの人に手に取って読んでもらいたい。
東京都心などのいくつかの書店で購入できるほか、通信販売でも入手できます。
また、東京都現代美術館の美術図書室に所蔵されています。
詳しくは、http://www.punctum.jp/times.htmlへ。