世界から「白熱電球」が本当になくなってしまうんじゃないか..ということを実感しているこの頃です。
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あのエジソンが発明して以来、世界中のいろんな場所で夜を照らしてきた「白熱電球」。
今や「常識」となってしまった「CO2削減」という大義の前に本当に無くなろうとしているのでしょうか。
世界では、「2010年」というタイミングが、ひとつの重要なターニングポイントとして設定されています。
その2010年から、
EUでは、「白熱電球の販売を禁止する」との報道。
日本では、東芝が「白熱電球の製造中止」を正式発表。
そして、
今年あたりから、日本の照明器具メーカー各社は、
蛍光灯やLED(発光ダイオード)を使用した器具のプロモーションに比重を移しつつあります。
大きな変化の波は、本当に来ています。
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じつは、
空間をデザインする者たちにとって、デザインの考え方を揺るがされる、とても大きな歴史的事件なのです。
僕たち空間デザイナーは、照明器具のプランニング(配光デザイン)をおこなうとき、その空間の質によって「照明器具(電球)」を使い分けます。
たとえば、
商業施設と住宅。
家の中の、ダイニングと廊下。
子どものスペースと大人のスペース、高齢者のスペース。
…
基本的に、これらはすべて、求められる「光の質」が違います。
その「光の質」をつくることができる照明器具や電球をそれぞれに選ぶのです。
その中で、とくに「住宅用照明」の分野でもっとも使用するのが「白熱電球です」。
白熱電球は、普通の商店で安価に購入することができて、構成部材が単純で材料リサイクルしやすい。とても扱いやすい非常にシンプルな製品です。
さらに、白熱電球は「調光器」を用いた配光デザインがしやすい、という利点があります。
ただ単純に「暗くしたり明るくしたり」するだけではなく、僕ら専門家は、メンテナンス性を考慮した、ちょっと面白い使い方をするのです。
たとえば、
60Wの明かりが欲しいとき、60Wの電球を使わずに、あえて100Wを使います。
その電球に調光器を用いて、照度を60Wくらいの明るさまで落とす。
電球に負担をかけない使い方です。
そうすることで、実はランプ寿命が飛躍的に伸びるのです。(フィラメントへの負荷が減るため)
さらに、通常の60W球そのままよりも、若干、色温度が下がります。(より温かい色になります)
そしてたまに、明るい光が欲しいときは、電圧をアップさせて100Wの明るさを得ればいい。
照明には、「ベース照明(全般)」と「スポット照明(局所)」というカテゴリーがあります。
実はベース照明に関して言えば、
普段はフル照度で使って、ムーディーな雰囲気タイムのときに「しぼる」…という使い方をしないのです。
むしろ逆。
普段は「しぼって」使っておいて、たまに「フル照度」にする、というのを基本仕様とするのです。
住宅は基本的に、明るくしすぎないほうが良いのです。
で、一方、ぐっと「ムーディーな光」が欲しいときは「スポット照明(局所)」の光を有効に使います。
ちなみに、勘違いされてる場合が多いのですが、ただ全体「暗く」すれば雰囲気がムーディーになるわけじゃありません。室内の照度分布のメリハリが物語性を誘導するようにすることが「部屋のムードづくり」なのです。
いや「ムードづくり」なんて変な書き方をしていますが、機能性を重視した配光デザインにおいても同様な手法を用います。
照明なんて、ただバンッ!て光があればいい、そんなワケではないのです。
配光デザインとは、けっこう奥が深い世界なのですよ。
こういう使い分け、蛍光灯などには決してできない芸当ですね。
いわば、ローテクな工夫をした「合理的かつドラマチックな使用法」です。
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…と、こういう感じに、僕の設計する住宅においては「白熱電球」が今でも大活躍しています。
でも近頃「白熱電球」は、「CO2削減」という大義を前にどうもバツが悪いのです。
エネルギー効率が非常に悪い。
確かに、同じ照度(lx)で比較した場合、蛍光灯の消費電力は白熱電球の約半分、LEDの消費電力にいたっては約1/6程度しかありません。
比べ物にならない差です。
やはり分が悪い。
世界は当然のように、
「ムダ使いな白熱電球を禁止」して、「蛍光灯やLEDによる代替化」に突き進んでいます。
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でも、もう少し「白熱電球」の擁護をしておこう。
(….話が長くなった。まだ続きます。)