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関係現場の方々に無理を言って取らせていただいた「早くてわがままな夏休み」である。
家族と一緒に、名古屋の僕の実家に何日か泊まった後、ローカル特急をつかって妻の実家、和歌山県の新宮に向かう。
今年は、それからもう少し足をのばして、宇久井というまちの「海」に来た。
美しい海だ。
普段暮らしている東京からはとても遠いところだ。
新幹線とローカル特急、レンタカーを乗り継いでやっと辿り着ける「遠い海」。
このあたりの特産である鯨肉に舌鼓を打ち、可哀想だけどねぇとか言う。
そして夜、海を見下ろす露天の湯につかる。
普段の生活からはとっても「遠い」。
遠いからこそ経験できる空間である。
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唐突に、、
ふと思い出してしまうのは、Jean-Luc Godard(ゴダール)の「Pierrot Le Fou(気狂いピエロ)」のラストシーンだ。
海を見下ろす崖の上でダイナマイトを顔に巻いて自爆してしまう男と、「海」の映像。
ゆっくりカメラがパンされた後、ランボーの「永遠」という詩があっさりと朗読される。
「・・また見つかった、何が、永遠が、海と溶け合う太陽が。・・」訳/小林秀雄
確か十代の頃、小さなアートシアターで観た映画。
強烈に脳裏に焼き付けられている。
美しさと、恐ろしさと、やるせなさ。
常に、美しさは「美しさ」だけで存在できない。
恐ろしくて、やるせない場合にのみ、何かは「美しく」なる。
この映画を観た頃、たしか僕は「モノ作り」を職業にしようと決意していたときだと思う。
そんな当時の僕にとっては、忘れられない衝撃的なラストシーンだ。