2011年12月03日 3. 設計のプロセス・方法

「つくる」「つくらない」


進行中のリノベーション「月と太陽の家プロジェクト」。
先日現場にて、施主の言葉に思わずハッと気付かされました。

・・


僕らの仕事は、もちろん「つくること」なのだけど、
じつは、新しいモノをただ「つくること」とは違う、別の大切なことが、実は、ある。
それを忘れちゃいけない。

とても難しい概念だけれど、
「つくること」と同じくらい大切な、その別のこととは、
「つくらない」という行為であり、あるいは、「つくる」と「つくらない」の両義的行為のことである。


・・


月と太陽の家プロジェクト」は、築30年近くの一戸建て住宅の全体丸ごとリノベーションです。


この住宅は、当時としてはちょっと特殊で、2階玄関の2階リビング。
道路から外部階段をのぼって、家の中に入る建物でした。

今回のプロジェクトでは、この外部階段を撤去して、2階玄関をクローズして洗面室に改修。
かわりに1階の通用口を新しい玄関にする計画。

ところが、その新しい玄関の場所には樹高2mほどのカエデの樹があります。
葉形に特徴がある「タムケヤマ」という独特の品種です。

この樹を別の場所に移植して、ドアを取り替えて、ここに大きな玄関ポーチをつくる計画でした。


・・


この日、現場に着いてみると、施主のミヤザキさんが
「かとうさん、ちょっと話があるんですけど..」と。

この樹を移植するためには、ほぼすべての枝を落として狭い外部通路を運んでいかねばならず、「命ある植物」には大きな負担がある。
そういうことをするのには、自分としては躊躇がある。
できれば計画変更して、この樹をこの場所に植えたままで、新しい玄関をつくりたい。

そんな主旨でした。


でも、はっきり言って、この樹はものすごくジャマです。
この写真でも分かる通り、完全に玄関となるべきスペースを占領している。
立派な玄関ポーチをつくるためには、是が非でも移設しなくちゃ成り立たない。


リノベーション(リフォーム)して、立派な玄関をつくることは、とても一般的なことであって、僕たち設計者は当然、通常こういうプロジェクトを手掛ける際は「カッコいい玄関をつくろう」と当然思うわけです。


・・


少しだけ、沈思黙考。


事実として、この樹が玄関になるべき場所を占領していることは、如何ともしがたい。
でも確かに、ミヤザキさんの言うことが、理解できてしまって仕方がない。


カチャン..と、頭の中で固まっていた小さなギアが微妙に動き出す音が聞こえました。


「そうですね。このままにしましょう。」


ガッチリつくろうと思っていたことを取りやめて、できるだけ「つくらない」ことによって、新しい空間を創造する。


でも、「つくる」。
僕はモノづくりだからね。

この場所を占領している古い樹木と、どうやって共生していくか。

それをよく考えて「つくる(つくらない)」。


・・


この「つくる」と「つくらない」の両義的行為は、
今回のような改修設計だけに限らず、
すべての創造行為に関してとても大切なコトだ。

僕は、それをあらためて自覚したわけです。

・・


ちなみに、現場は内部の改修が着々と進行中。

くわしくは、施主自身のブログ「月と太陽」にて詳しく読むことができます。
>>http://www.tsuki-to-taiyo.com/home/re-home-project/





加藤幸彦/KATOUYUKIHIKO
(建築家.コンセプチュアルアーキテクト)

エス
一級建築士事務所:東京都第42425号
@ 東京都杉並区久我山5-6-29-301
TEL: 03-3334-3843
MAIL: katou@sp-n.gr.jp facebook: /katouyukihiko





Web更新情報
KATOUYUKIHIKOの関連サイト


Copyright (c)2006 --
KATOU YUKIHIKO + S,
All Rights Reserved.


Powered by Movable Type 3.2-ja-2






-