「絶 / 景」@トーキョーワンダーサイト渋谷

猛烈な勢力をもつ台風が近づく中、都内にて打合せとリサーチ作業の合間にトーキョーワンダーサイト。大巻伸嗣の「絶・景 -真空のゆらぎ」を鑑賞(体験)しました。


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トーキョーワンダーサイト。
渋谷区立勤労福祉会館というずいぶん「お役所的」な建物の中にある、東京都の運営ギャラリーです。
強い雨。
水の中をくぐり抜けるように公園通りをのぼり、建物の中に入ります。
ギャラリーは1階の最奥。通路の突き当たり。
白い作業用のゴム長靴をはいたスタッフが、暗い部屋から出入りしているのが見えます。
何となく、異様な予感。
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作品は、
大量のスラグ(ごみスラグ)を使ったインスタレーションです。
スラグ(ごみスラグ)については、このサイトの説明が分かりやすいかも。
スラグ(ごみスラグ)は、じつに多くの場面で主に都市土木用の資材として使われています。
リサイクル材として、非常に身の回りに多く存在するマテリアルです。現代の都市においては、「大地をつくる主要材料のひとつ」といってもほぼ過言じゃないです。
「現代都市の主要素材のひとつ」という事実が、このインスタレーションを鑑賞(体験)するときのポイントだと思います。
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ホール部分での「真空のゆらぎ スカイライン」という作品と、2つの暗い部屋を使った「言葉の無い予言」「罪の無い破壊者」というそれぞれの作品による構成。
ホールの作品を横目でチラリと見て、先ずは2つの暗い部屋へ。
真っ暗です。
けっこうゾッとします。
鑑賞者は歩行経路に敷きつめられた「スラグ」の上を歩かなければなりません。
暗くて足下がよく見えません。とても危険です。
その空気感が、メッセージ性の強い作品への恐怖を増幅させます。
不快な後味に満たされ、ホールに出た僕の靴の底には大量の黒いスラグの粉末が付着し、黒々とホールの白い床を汚します。
黒い足跡を汚くスタンプしながら、ホールの作品「真空のゆらぎ スカイライン」へ。
寡黙だけれど、とてもインパクトのある作品。
禅庭の砂山を思わせる、スラグで作られた「山」。
そして螺旋階段を上った2階部分では、大量に搬入された「スラグ」が荒涼とした大地を再現しています。下階の「山」との関係がここで明らかになります。
2階でのスラグを使った「大地」の再現は、ウォルター・デ・マリアの重要な作品「the new york earth room, 1977」を連想させます。
ランドアートの系譜に連なることを自ら表明しつつ、優れて現代的な批評力を加えられた力強い作品だと思います。
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ひととおり鑑賞(体験)させていただいて、会場スタッフの方に少しお話をうかがいます。
すると、ときおり作品に起こる「ある出来事」のことを教えてくれました。
それは、何時起こるか予想できない“ある出来事”です。
ずっとここにいるスタッフでしか見ることができないかもしれない貴重な瞬間。
時間は止まらない。少しずつ歴史は進み続けている…という事実への証拠をしめす興味深い一瞬です。
もしも、この作品が古典的な意味での「術」と言えるとするなら、凝縮されたその瞬間こそが、この作品の最大の「美」なのではないかと思います。
それにしても…、
この作家、大巻伸嗣さんはとてつもなくパワーのある方ですね。
あらためて作品の完成度と、その背後にある情熱に感服します。
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会期は、2009年11月08日(日)まで。
予測できない“貴重な瞬間”には、遭遇できますでしょうか。
僕も、もし会期中に近くに来ることがあれば、それを期待して再訪してみることにします。